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【Aさんに生きる希望を】
Aさん、60歳代男性。膵頭癌末期のお客様の訪問で「思いを汲み取る」ことの大切さを改めて学びました。
Aさんは去年の9月中旬に奥様と栃木に旅行に行かれ、その旅行が最後の遠出となりました。仕事が生き甲斐で、訪問時に「今の職場はお給料もいい。もう直ぐで病気休暇が終わる。電車で行こうと悩んでいる。」と職場復帰が生きる希望となっていました。私たちが初めて訪問したのは10月上旬でした。日により、癌性疼痛の程度は異なり、食事・水分摂取量もまちまちでした。ただ、セルフケアは自らできており、レスキュー管理も問題なく自己管理しておられました。10月15日から職場復帰を目標にしていたAさん。無常にも、癌性疼痛は増し、自力歩行も出来る日と出来ない日が出てきました。「お世話になった職場の職員に御礼に言いに行きたい。半日でもデスクに座り、仕事がしたい。」と毎回、訪問時に目を輝かせながら話されていたので、どうにか実現できないかと考え、様々な提案をしました。電車での移動は困難であり、介護タクシーで1日でも通勤してみてはどうかと説明しました。奥様は「本当は弱っている自分の姿をあまり見せたくないのかもしれない。この状況で無理して動くとそのまま死んでしまうのかもしれない。」と不安要素が大きかったようです。
職場に顔を出すかどうか迷っている数日で、無常にも一気に状態増悪し、ほぼ臥床状態が続くようになりました。点滴を最後まで拒んでおりましたが、水分摂取もできなくなり輸液開始がCVポートから開始されました。また癌性疼痛に対しては、PCAポンプにてレスキューが始まりました。徐々に、意識朦朧とし始め、眠る時間が増えてきました。訪問時、Aさんより「ずっと寝ていると腰が痛いな。」と話があり、車椅子に乗車していただき、自宅近くの公園に奥様も一緒に散歩に出かけました。散歩に出掛ける際、Aさんお気に入りのサングラスとハットを身に纏ってもらい、屋外でAさんと奥様の写真を撮らせていただきました。不思議と屋外に出るとAさんは十分に覚醒され、嬉しそうに公園で夫婦2人で思い出話をされたり、笑顔が増える時間でした。散歩中、Aさんから「高校生の頃は弱かったけどよく喧嘩したよ。でも、情があるから今でも親交があったりしてさ。楽しかったよ。」など、ご自身の辿ってきた個人史を語ってくれる時間ともなりました。奥様の居ない所で、奥様への感謝の気持ちを話され、長年連れ添って手を取り合いながらここまで歩んできたと考えると、目頭が熱くなりました。2日連続で散歩に出られましたが、それ以降はAさんの意識レベルも低下し、屋外へ出ることはできませんでした。2日目の散歩が多分最後になると予測し、Aさんも外に出たいと話されたので挑戦しました。
癌末期の方は急激な変化が隣り合わせです。その時・その瞬間をどう捉え、その場でどう私たちが関わるかで、残された家族の生きる希望にもなります。Aさんが息を引き取った瞬間、奥様は大混乱され、夫の死を受け入れられない状況でした。約2ヶ月が過ぎた頃、弔問に伺いました。Aさんが過ごした部屋は、Aさんの趣味だったハットや時計・本・昔の写真などが飾られていました。奥様より「個展風に仕上げて、夫が安心して過ごせる空間を子ども達と作りたい。」と話されていました。やっと、立ち直りつつある奥様はお仕事も再開できたようです。会話途中で奥様から「〇〇さん、夫の職場復帰向けて動いてくれていたけど、最後になるかもしれないと思って色々提案してくれていたんでしょう?」と話がありました。私からは「そうです。可能な限り、本人の希望を叶えてあげたいと思って色々ご提案させていただきました。でも、ご家族にしたら無理して行く必要はないとか、何かあったらどうしようとか心配して当然ですよね。その判断は間違ってないですよ。」とお伝えしました。奥様は、徐々に日常に戻りつつある状態で、介護していた自己を見つめ直す時間が自然とできているようです。弔問終了時に奥様から「〇〇さん、弔問に来てくれてありがとう。肩の荷が降りた気がします。元気になった。訪問看護はすごいですね。訪問に来てくれた皆様から学ぶことが多かったです。」と涙しながら笑顔でお言葉をいただきました。
私自身、まだ道半ばで、自分の考え方や看護は妥当なのかと立ち止まることもあります。ただ、お客様・ご家族からとの関わりから得られた経験や言葉が背中を押してくれています。最期を迎える瞬間まで寄り添い、お客様・ご家族の思いを汲み取れる看護師で在りたいと思います。
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